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管理職の底上げ

管理職の底上げと経営人材の育成

あるメーカーの人材開発担当の方が、私たちに相談に来られたのは、全社員を対象に行っている、従業員満足度調査の結果がきっかけでした。定期的に行っているその調査の中で、上司部下間のコミュニケーションに関する数値が、他の項目と比較しても、際立って悪化し続けており、「この状況をなんとか改善できないか」というのが相談の内容でした。

一般的に、こうしたサーベイでは、問題がある箇所は特定できても、その問題がどんな構造や要因で起きているかを、正確に特定することは困難です。そこで私たちは、なぜ上司部下間のコミュニケーションの数値が全体の中で突出して悪くなっているのか、まず、その構造や具体的な事例を明らかにするため、幅広くヒアリング調査を行いました。管理職を含めたあらゆる階層にヒアリングを行った結果、下記のことが分かってきました。

ヒアリングを通して判明したこと

  • 上司と部下のコミュニケーションが表面的なものにとどまり、本音の話ができていない

  • 管理職が、ちゃんとマネジメントを学んだ経験がないため、個々が考えるマネジメント的なことをやるだけになっている

  • 部下に対して、仕事を振るだけで、管理職からのサポートやフォローが少ない

  • 管理職は、部下と1対1のマネジメントだけになっていて、チームとしての力や一体感を強化できていない

  • 管理職と新人若手との世代差も大きく、今どきの新人若手にあわせた指導育成ができていない

  • 管理職間のレベル差が大きく、優秀な管理職からダメな管理職のチームに異動した部下は、しばしば退職につながっている

  • 自部署や自業務の視点のみが強い管理職が多く、会社全体や部門横断の視点で考えられる、次世代の経営層候補となる人材が育っていない

ヒアリング調査の結果から分かったことは、管理職に関する問題は、実際、現場で数多く発生していて、それが、否定的な内容を比較的記入しやすい「上司部下間のコミュニケーション」に関する調査項目に現れていた、ということでした。私たちは、上記のヒアリング結果を踏まえて、下記の6つの方針施策を提案しました。

管理職の底上げのための6つの方針施策

  • 1.役割行動の体系化管理職として、どんな役割や行動が求められるかを、具体化&体系化する

  • 2.役割認識の共通化個々の管理職のバラバラな役割認識を、共通化していく

  • 3.自己課題の把握求められている役割&行動と比較した上で、自分自身の課題を自覚する

  • 4.実践スキル強化求められる役割&行動を実践する際に、必要となるスキルを強化する

  • 5.俯瞰経験の蓄積組織全体や部門横断の課題を解決した経験を積ませる

  • 6.継続育成の仕組化単発で終わらず、継続的に管理職を育成していく仕組みを作る

管理職昇格時に研修を受けてから、十数年以上も学習の機会がなかった管理職に、一から学んでもらうというのは、非常に大変で、コストもかかります。しかし、本来やる必要があることを、省略することはできません。時間やコストがかかったとしても、やっていくしかないのです。また、こうしたケースでは、「自分たちのマネジメントのやり方が普通だ」という認識を強く持つ管理職が多いこともしばしばで、その場合は、外部からの管理職の採用や新任登用によって、新たな血を入れていくことも、その思い込みを外していくための方法として有効です。

学習の機会をこれまで提供されてこなかった管理職を再教育していくには、少なくとも数年単位の取組みが必要になります。今回のケースでは、学習内容として、まず、管理職の誰もが現場で直面している、部下の指導育成に関する課題への取組みからスタートし、次第に、より上位の経営視点が学べる内容へとシフトしていきました。具体的に言うと、最初の1年間は、管理職全員に、2日間×3回の継続実践型の研修に参加してもらい、「2.役割認識の共通化」「3.自己課題の把握」を中心に学んでもらいました。次年度からは、毎年2回、管理職全員を対象とした研修やワークショップを行い、「4.実践スキル強化」を行っていきました。次世代の経営層の育成という視点では、「5.俯瞰経験の蓄積」にあるように、組織全体や部門横断に関するプロジェクトや業務を任せることで、自部署や自業務の視点や前提に囚われない俯瞰的な考え方や視点を身につけてもらいました。当たり前のことですが、すべてが順調に進むわけではありません。管理職に対する継続的な育成を進めていく中で、適切に成長していける層と、そこについていけなくなった層とが、明確に分かれるようになり、ついていけなくなった層からは、管理職から降格してもらう人も出るようになりました。

このような管理職への育成を継続的に行うことで、次々と、目に見える変化がでてきました。まず、大きく改善したのは、部署間の連携でした。研修やワークショップの中で、自部署や自分自身の業務内容や直面している課題を、他部署の管理職と共有することで、これまで接点が少なかった他部署の管理職との、相互理解や関係性が深まり、部署間の連携に関する問題がめっきりと減っていったのです。次に変化があったのは、管理職の課題解決力の向上でした。研修やワークショップの中で、現実に直面している課題に関する解決方法を、他の管理職と練りあげて、研修と研修の間に、それに関する具体的な実践を行う、という繰り返しの中で、管理職の人たちが、課題解決の「型」を習得できるようになっていったのです。最終的に、この企業では、管理職が中心になって、各部門の戦略を策定し、担当役員に提案していくことになりました。戦略策定の一端を担うようになったことで、管理職自身の戦略に対する理解や納得度も高くなり、それによって、さらに具体的な実践が強化されていく、というプラスのサイクルも強化されました。

管理職&管理職候補の底上げを進める上でのポイント

  • 管理職を育成してこなかったマイナス部分を取り戻すには、膨大な時間とコストがかかるが、組織成長のためには、それでもやっていく必要がある

  • 一足飛びには高いレベルには行けないので、現状の管理職のスキルレベルを見極め、複数年かけて、段階的にレベルアップを図っていく

  • 既存の管理職だけだと、固定観念から抜け出しにくいので、外部からの採用や新任登用によって、新たな血を入れて活性化する

  • 管理職の力がない段階でボトムアップを強化しても混乱を招くだけなので、管理職の成長に合わせて、経営層のトップダウンを段階的に緩めていく

  • 心ある管理職は研修で変わっていく人が多いが、心ない管理職は研修だけでは変わりにくいので、最終的には、求められている役割&行動と、評価制度を連動させる必要がある

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  • 経営環境の変化に対応し、自ら変化を作り出していく管理職を増やしていくには、イベント的な研修だけでは困難です。弊社では、様々な方法を組合わせて、管理職自身が、継続的に成長&変化していくための、一連の流れ&仕組みを構築していきます。

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