STORIES

支援事例

若手育成の体系化

体系的な育成による新人若手の成長&定着の強化

ある企業の人材開発担当者の方から、「入社3年以下の新人若手の退職者が増えてきたので、それをなんとかしたい」というご相談をされたのが、最初のきっかけでした。その担当者の方によると、「新人若手の育成については、現場中心のOJTでやっていて、数年前までは、特に問題は起こっていなかった。しかし、ここ2、3年、優秀で辞めてほしくない若手ほど、退職していくという話をよく聞くようになり、危機感を感じている」とのことでした。

こういうケースでは、人事や人材開発の担当部署側が、どういう経緯の中で新人若手が退職に至ったのかに関する詳細な情報を持っていない場合も多いため、客観的な事実を、まず押さえることから、私たちは始めます。具体的には、まずは、過去数年の退職者のデータを分析し、「本当に優秀な新人若手が辞めているのか?」について、定量的な確認を行うことにしました。詳しく調べたところ、「退職率はそれほど悪化していないが、優秀な社員が退職している」「現場で必要としている人数が、そもそも不足しているため、一人の退職が与える影響が以前よりも大きくなっている」ということが分かってきました。

次に、入社2〜3年目の新人若手、その上司にあたる管理職、新人若手を現場で育成する育成担当者の三者に、それぞれヒアリングを行い、退職の要因を探ることにしました。その結果、下記のことが分かってきました。

ヒアリングを通して判明したこと

  • 人員不足によって、管理職がプレイヤー化していて、新人若手の育成やケアに手がまわっていない

  • 以前よりも、顧客から求められることが厳しくなっていて、新人若手といえど失敗が許されなくなった

  • 特に地方ではシニアの割合が高く、身近にロールモデルとなる人がいないケースが多い

  • 現場育成担当者はいるが、育成に関する適切な教育を受けたことがないため、育成する人ではなく、わからないことがあったときに質問が受ける人になっている

  • 職種や部署によっては、入社以来、同じような仕事を、ずっと退職するまで行っている

  • 人員が不足していて、新人若手1人でも退職すると、現場に大きな負荷が掛かってしまう

  • SNSを通じた大学同期との交流などから、他社の情報が数多く入り、自社での今後のキャリアに不安を持っている

新人若手の退職は、上記のような様々な要因が複合して起こっている現象であり、単純に、研修をすれば、すべて解決するような問題ではありません。課題の構造を明らかにし、絡み合った糸を解きほぐせるような、方針施策を一つ一つ実施していく必要があります。私たちは、最終的に、下記の6つの方針施策を提案しました。

新人若手の成長定着のための6つの方針施策

  • 1.成長実感の強化成長を振返り、実感できる機会&場を作ること

  • 2.成長像の具体化今後の成長イメージを具体化できるような支援を行い、キャリアを自ら作っていきやすい仕組みを作ること

  • 3.基幹スキル強化不足していることで、現場で問題が起こっている文章作成やタスク管理などのスキルを学ぶ機会を作ること

  • 4.現場成長の体系化現場を巻き込んで、「各現場で、新人若手に、どのように成長をしてほしいのか?そのためにどのような支援が必要なのか?」を体系化すること

  • 5.育成スキル強化現場の育成担当者に対して、定期的に、育成を振返ったり、育成力を強化する機会を作ること

  • 6.育成評価の強化きちんと育成している管理職&現場育成担当者と、そうでない管理職&現場育成担当者を、評価制度で明確に差をつけるようにすること

これらの施策を、すべて同時に実施しようとすると、担当者側も現場側も、とても負荷が大きいため、通常は、重要な部分や比較的実施しやすい部分から、優先順位をつけて段階的に実施していきます。例えば、研修のように、人材開発担当部署だけで完結する部分や、現場を巻き込みプロジェクト化していく部分は、比較的すぐ着手していけますが、評価制度等の仕組制度を変えていく部分は、他の部分が固まってから着手する方がいいです。このケースでは、上記の「1.成長実感の強化」「2.成長像の具体化」「4.現場成長の体系化」など、新人若手が成長定着していくための骨組みを作るところから着手することになりました。

当たり前のことですが、進めていく上で、すべてのことが順調にいくわけではありません。このケースでは、「4.現場成長の体系化」を行う際に、現場管理職間でも意見の相違があり、それを、まとめていくのは、とても大変でした。そういった状況でも、外部の客観的な立場の私たちが、ファシリテーターとして議論に入り、段階的なステップを踏みながら、話し合いを重ねることで、最終的には誰もが満足するものに仕上げることができました。こうして作成したものを、2年目フォローアップ研修の中で取り上げ、新人若手に効果的に学び、活用できるような流れを作りました

この2年目フォローアップ研修や他の施策を実施していくことによって、次第に、目に見える変化がでてきました。まず変化があったのは、新人若手の退職率です。最も退職が多かった時期と比べると、5分の1にまで減少し、大幅に改善することができました。
2年目フォローアップ研修や現場側での支援を通して、彼らが「ここでも、まだ自分自身が成長できる余地がたくさんある」と感じられるようになったことが、その大きな要因だったようです。もちろん、新人若手の優秀層の退職率も、あわせて改善されました。次に変化があったのは、現場育成担当者の、新人若手に対する関わり方&支援の仕方でした。どう若手を育成すればいいのか、迷っていた現場育成担当者も、新人若手の心情に対して理解し、育成内容も明確化されたことによって、具体的な行動の変化につながったようです。毎年実施しているエンゲージメント・サーベイの中の「上司部下間の関係性や育成」に関する項目の数値も、以前と比較して、次第に良くなってきました。

このケースでは、すぐに目に見える変化を起こすことができましたが、常に改善していかないと、また元に戻ってしまったり、新たな問題が起こったりします。大切なのは、やる必要があることを、きちんとやり続けられるかどうか。それに尽きると私たちは考えています。そのためには、新人若手の状況や課題を、企業として把握し、継続的に対応していけるプロセスや仕組みを設計し、回していく必要があります。

新人若手の定着を進める上でのポイント

  • 新人若手は、合理的な理由によって退職するので、残ったほうがいい合理的な理由を、無ければ作り、それを周知する必要がある

  • 研修でできることは限られているので、現場の中で、どう新人若手の成長を支援していくかが、最も重要な部分になる

  • プレイングマネジャー化が進み、育成が滞っていることが多いので、組織として、脱プレイングマネジャー化していくのか、プレイングマネジャーとしてできる範囲の育成を行っていくのかの方針を明確にして、その中でできる手を打っていく

  • 知ることで育成をすぐ変えることができる部分と、知ってもすぐ変えることができない部分があるため、まず前者の部分で、目に見える成果や変化を出す

  • 管理職や現場育成担当者が、育成スキルを身に付けるのは一朝一夕にはいかないため、複数回&数ヶ月にわたる継続実践型の研修を行いつつ、その上の上司が、しっかり支援していく必要がある

関連キーワード

  • 現場育成担当者の育成
  • OJTの体系化
  • 新人若手育成の体系化
  • 新入社員研修
  • 1〜3年目フォローアップ研修

関連する商品サービス

  • 新人若手の成長を支援していく上で、入社1〜3年目が特に重要な期間です。弊社では、3年間の成長ステップや必要な支援策を、「新人若手自身」「現場育成者&部署」「人材開発部署」の3者の視点から構築して、その実施を支援していきます。

他の事例を見る

管理職の底上げ

誰もが変わっていく必要があることは認識しているものの、具体的に、何をどう変えればいいのかがわからず、結果的に、管理職も含めて、皆が昔ながらのやり方をただ続けているだけになっている会社で、その状況をどのように変えていったのか?

  • 管理職の育成
  • 管理職候補の育成
  • リーダー育成
  • 次世代経営層の育成
  • サクセッションプラン
  • 管理職研修
READ MORE

部署&組織の変革

各部署が部分最適で動いており、部署間やチーム間の連携がうまくいっていなかったある組織。ワークショップや個別の話し合いを通じて、部署間の連携の問題は大幅に改善。具体的に、どのようなやり方で実現したのか?

  • 部署間連携
  • チーム間連携
  • コンフリクト・マネジメント
  • 全体最適
  • 部署変革
  • 部署内&部署間ワークショップ
READ MORE

人事の診断&強化

組織の中の人材供給の流れである「エンプロイー・パイプライン」に滞りがあり、様々な箇所で問題が表出化していた会社で、結果的に、社員が「この会社で働き続けたい」と思える組織や制度をどのように作っていったのか?

  • 人事戦略の策定
  • 人材開発戦略の策定
  • 人材開発の体系化
  • 人事制度の再構築
  • 戦略的採用
READ MORE

実践スキルの錬成

数多くの研修を行っても、具体的な実践につながらなかったある会社で、弊社の継続実践型研修を導入したところ、参加者本人だけでなく、部下や周囲にも、成果につながる数々の具体的な行動の変化が起こるようになった。どんな研修を行ったのか?

  • ディープスキル・トレーニング
  • コーチング
  • フィードバック・インテンシブ・プログラム
  • 継続実践型研修
READ MORE
このページのPDFをダウンロード このページのPDFをダウンロード

セミナー&勉強会の詳細&申込み

EVENTS

お問合せ・資料請求について

CONTACT US